『あまちゃん』研究その8:ダサいぐらい何だよ、我慢しろよ!

  • 2013.12.26 Thursday
  • 14:20


『あまちゃん』の中でもっとも素晴らしい回といえば、アキとユキが本気でぶつかり合う東京編第16週第91回でしょう。

父親の足立功が脳梗塞で倒れて、アキと一緒に上京できなかったユイは、その後母親が失踪したことにショックを受けて、不良化してしまいます。そんな中正月になって帰郷したアキをユイが海女カフェに夜中に呼び出します。

場面写真とともに、アキとユイのやり取りを再現してみましょう。

ユイは、わざわざアキを呼び出したくせに、アキに文句ばかりをいいます。ユイがアイドルなんかにはならないと言い切る場面からご覧ください。


(中略)




アキ:ダサい?
ユイ:ダサいよ、あんなの。オタク相手に生足だして媚び売って真ん中に立って、それがなんなの!?「暦の上ではディセンバー」?だから、何?「絶滅危惧種下町アイドル」?知らねーよ。その下でしょ?要するに。ダサいアメ女のダサい妹分がGMTなわけでしょ。ウケる。
 今となっては、あんなものに夢中になってた自分が恥ずかしいっていうか、もう汚点だよ。昔の自分を知ってる人に会うのが本当にイヤ。ミス北鉄とか、ホント無理、勘弁してほしい。
アキ:そりゃねえべ。
ユイ:せいぜい頑張ってよ、応援してますんで。
アキ:そりゃねえべよ、ユイちゃん、あんまりだ!ずっと待ってたんだぞ、ユイちゃんのこと、必ず行くって、すぐ行くって言うから、待ってたんだぞ。
(中略)



アキ:やめだって?冷めだって?おら、なんのために東京で、奈落で、風呂もねえ合宿所で。
ユイ:知らねえし。
アキ:ダサい!? そんなの知ってるよ!やる前からダサいと思ってた!ユイちゃんがアイドルになるって言い出した時から。
(中略)
アキ:ダサいから、聞こえねえふりしたんだぞ。そしたら、ユイちゃん、もう1回言ったんだぞ!
(中略)
ユイ:「私のせいだ」って言いたいの?
アキ:違う!!
ユイ:じゃあ、何!?アキちゃんは、なんでやってたの!?






アキ:東京でおら、嫌というほど思い知らされた。みんなが待ってたのはおらでねくてユイちゃんだって。
(中略)
アキ:初日からその調子だった。いくらおらだって、傷ついた。逆だったらよがったのにって。
ユイ:ハッ、逆?
アキ:おらでねくてユイちゃんが東京さ来ればいがったのにって。そしたらみんな喜ぶし、ユイちゃんの夢もかなう・・・
ユイ:そんなこと軽々しく言わないでよ!母さん蒸発して、病気の父さん置いて行けるわけないでしょ!? 
(中略)
ユイ:退院したからって、安心できないの。再発の恐れもあるし、母さんいないし、兄貴1人にまかせるわけにはいかないでしょ。わかる?アキちゃんみたいに気楽な身分じゃないの、代わってほしいのは、こっちだよ。
アキ:お母さん、帰ってこないよ。
ユイ:え?
アキ:ごめん。
ユイ:帰ってくるよ、必ず。
アキ:ごめん。






ユイ:40位の繰り上げ当選のくせに自慢しないで!








19歳の少女の魂の絶叫です。

アイドルになりたいけれどもなれずに苦悶するユイとアイドルになんかなりたいわけではなかったのに図らずもアイドルになろうとしているアキの心と心がぶつかりあって、涙なしでは見られない名場面になっています。クドカンの脚本は絶品だし、能年玲奈も橋本愛もしっかりとその期待に応えています。

この若い女優ふたりを通して、「ダサいくらい何だよ、我慢しろよ!」というセリフを聴くと、もしかしたらこのふたりもこの『あまちゃん』というドラマを作り上げる過程でいうにいわれぬ苦労をして、我慢に我慢を重ねたのではないかと想像してしまいます。

世の中には、時々苦労も何もしないで、スムーズに成功している人がいます。しかし、そんな人は、ほんのひと握りです。大部分の人は、アキやユイのように、夢だけはあるものの、うまくいかないで苦しんでいるものです。この文章をお読みのあなたも、こんなブログをお読みなのですから、きっと後者のひとりのはずです。

そんな人に向って、そして自分自身に向っても、アキ=能年は「ダサいくらい何だよ、我慢しろよ!」と叫んでいるのだと思います。

どんな仕事であろうが、どんな勉強であろうが、泥臭くてダサい作業の積み重ねでできています。それを嫌がっていたら、どんなこともうまくいきません。

英語ができないと悩む人だって同じです。

アメリカ人は、1年365日24時間、英語を使って暮らしているわけです。ビジネス・スクールをめざす25歳のアメリカ人がいたとして、ざっと24時間×365日×25年=21万9000時間英語を勉強したことになります。英語がうまくて当たり前です。

それに対して、中学1年12歳から25歳まで毎日2時間平均で英語を勉強したとして、2時間×365日×13年=9490時間にしかならないのです。つまり22分の1の勉強量で、ネイティブ・スピーカーに挑まなければならないのです。大変なことです。

ゆえに、戦略は絶対に必要です。しかし、それだけではダメです。ダサかろうが何だろうが、毎日2時間休みなく勉強する我慢が必要なのです。それがやれなければ、いつまで経っても夢はかないません。

しかし、19歳でこのことに気づいて、ダサくてもがんばったアキは、その後映画『潮騒のメモリー』の主役を射止め、ユイと地元系アイドルとして成功するのです。それもこれも、ユイという親友とともに、我慢をし続けた結果でしょう。立派というしかありません。脱帽です。

今日の教訓: 我慢して努力する若者は、ダサくない!



NHK連続テレビ小説 あまちゃん 16 おらのママに歴史あり2
宮藤 官九郎
ブックウォーカー

(この巻のスペシャルコメントは、松尾スズキです。)
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