小学6年生の英語が、大衆の心をつかむ

  • 2016.06.04 Saturday
  • 13:04
英語は難しければよいというものではありません。
相手のレベルに応じた英語を使わないと、相手の心には響かないものです。

その意味でいま現在もっともうまい英語の演説家は、ドナルド・トランプ氏です。
この人の率直な発言がアメリカ国民に受け入れられています。
そして、その背景には、わかりやすい英語があったのです。
 
読売に面白い記事を見つけました。参考にしてください。

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トランプの小学生英語が米国民にササる訳
ライター・作家 水次祥子
読売新聞 2016年05月30日 05時20分

  米大統領選で共和党指名候補に確定した不動産王ドナルド・トランプ氏。人気テレビ番組の司会者も務めていた同氏の最大の武器は歯に衣着せぬ話術だ。過激な発言が反発や嫌悪感を招く一方、既存政治に不満を持つ層の支持をかき集めようという戦術が見てとれる。だが、その演説は小学校レベルの英単語ばかりだった。そんなトランプ氏のスピーチをアメリカの一般市民はどう思っているのか。在米ライターの水次祥子さんが説明する。

きれいな英語とは真逆な演説

 Make America great again.(アメリカを再び偉大な国にしよう)
 America is going to be strong again.(アメリカは再び強い国になる)
 We are losing but start winning again.(私たちは負けている。だが再び勝ち始める)

 これらは米大統領予備選・共和党候補のドナルド・トランプ氏(69)が選挙キャンペーンの演説等でよく使っているフレーズだ。とてもシンプルで短く、英語を母国語としない外国人にさえ容易に理解できる単語が並んでいる。

 米国人からいわせると、トランプ氏の話し言葉は「ブロークン・イングリッシュ」。ニューヨーク州クイーンズ生まれの同氏はニューヨーク独特の訛も強いため、その他の地域の人にとっては聞きづらい部分もあるそうだ。きれいな英語を話さず、文法の間違いも多い同氏が書く文章には綴の間違いも多いため、その言葉からは知的な印象は受けない。

 米国、特にニューヨークでメディア業界の界隈に身を置いていると、ニューヨーカーたちはトランプ氏やそのスピーチをジョークのネタにして笑ったり、「なにそれ、トランプみたい」「オーマイガッ」といった会話を耳にしたりすることがある。一般企業に勤務している知人は「トランプって一体誰から支持されてるんだろうね、きっと私たちとは一生会うこともない人たちだよねと話してる」と言う。

 トランプ氏は不動産業で成功した大富豪であるため、エリートであるかのように誤解する人も多いだろうが、実際は真逆だ。同氏の支持者はブルーカラーの白人層が圧倒的に多く、簡単でわかりやすい英語を話すせいか、実は米国に住む移民労働者からも高い支持を得ていると米メディアは伝えている。

小6レベルの言葉遣い?

 大統領のスピーチ言語を研究する米ペンシルベニア州ピッツバーグのカーネギー・メロン大学・言語テクノロジー研究所が3月に発表した研究結果によると、米歴代大統領たちのスピーチで使われている英語はほとんどが6年生から8年生レベルのものだ。そして、肝心のトランプ氏の英語は、中でも最もレベルが低く、6年生をやや下回るという。

 日本の教育システムに置き換えると、6年生は小学6年生、8年生は中学2年生ということになる。同研究所の分析は、使われている単語と文法によって判定している。例えば、スピーチの中で使われている英語のうち5年生、6年生、中学1年生で覚える単語がそれぞれ含まれていたとして、6年生で覚える単語が中でも一番の頻度で使われていた場合、その平均値を取って6年生レベルと判定。これと同様に文法に関しても、6年生レベルで覚える文法が一番頻繁に使われていれば6年生レベルと判定している。

 研究結果が発表された3月というのは、まだマルコ・ルビオ氏もテッド・クルーズ氏も共和党予備選の候補から撤退しておらず、共和党主流派がトランプ氏の台頭に苦虫をかみつぶしつつもその流れを止めることができるだろう、という楽観論がまだ強かった。そんな中で発表されたこの研究結果は、今回の大統領選を違った角度から見ることができると話題になった。

歴代1位はリンカーン大統領

 分析対象となったのは共和党のトランプ氏、クルーズ氏、ルビオ氏、民主党のヒラリー・クリントン氏、バーニー・サンダース氏の主要候補5人。彼らはいずれもごくシンプルな英語を使っているのだが、その中でもトランプ氏の使う英語は誰よりも簡単らしい。

 例えば同氏がスピーチでよく使う「win(勝つ)」という単語は3年生で覚える単語、冒頭で紹介した文に何度も出てくる「again(再び)」は1年生で覚える単語だそうなので、小学校低学年の子供でもかなりの部分が理解できるだろう。

 同研究所は今回の大統領候補と過去の大統領の英語レベルも比較している。それによると、スピーチで使っている文法に関してはエイブラハム・リンカーン大統領が11年生(高校2年生)レベルと最も高く、ジョージ・W・ブッシュ大統領が5年生レベルと最も低いが、トランプ氏もその最低レベルに近く6年生をやや下回るレベルだ。

 歴代大統領のスピーチの中で最高峰のグレードと判定されているのは、リンカーン大統領が1863年11月19日に行った、かの有名なゲティズバーグ演説である。

 And that government of the people, by the people, for the people, shall not perish from the earth.(そして、人民の人民による人民のための政治を地上から決して絶滅させない)

 この一節は、世界中に知らない人がいないだろうというくらい有名な名文であり、しかも非常に格調が高いというわけだ。

 ボキャブラリーに関しては、リンカーン大統領、ロナルド・レーガン大統領、ビル・クリントン大統領、ジョージ・W・ブッシュ大統領、バラク・オバマ大統領は少なくとも8年生(中学2年生)レベルの英語で話している。その一方で、今回の大統領候補はサンダース氏が10年生(高校1年生)レベルと最も高く、トランプ氏が7年生(中学1年生)レベルと最も低い

田中角栄氏と共通点

 しかしトランプ氏は、ヒラリー・クリントン氏と同様で、使う英語のレベルをスピーチごとに微妙に変えているということも明らかになっており、聴衆に合わせた言葉を選ぶというきめ細やかな戦略を意図的に使っているという可能性も指摘されている。

 この点で思い浮かべるのが田中角栄元首相の演説だ。弁舌の巧みさで知られた田中氏は、話す場所や聴衆によって話し方を自在に変えることでも有名だった。演説の際に台本に書かれた文章通りのことを言うのではなく、自分の言葉で聞き手に語りかけ、人の心を惹ひきつけるという点で、トランプ氏と田中元首相は共通している。

トランプ氏は「解毒剤」?

 また別の研究結果によると、感情的な言葉を使う大統領候補は社会が危機的状況にあるときに支持を得やすいことがわかっており、それが今、トランプ氏が支持を集めている理由だと指摘されている。

 この調査は、オハイオ州立大学が2012年の大統領選期間中に行い、今年3月に発表したものだ。好景気のときは穏やかな言葉を話す大統領候補が支持され、過激で感情的な言葉を話す候補は受け入れられないが、不況下ではこれと真逆の現象になるという。

 トランプ氏は「メキシコとの国境に壁を作れ」「イスラム教徒の国内入国を完全に禁止せよ」などの過激な発言を繰り返し、メディアや共和党内からも激しく批判されることが多い。しかし、こうした発言によって支持を減らしている様子はない。

 日本は「本音と建前」の社会だが、米国も実は大変な建前社会だということをご存じだろうか。米社会で重んじられている「political correctness(ポリティカル・コレクトネス)」は、直訳すると「政治的正しさ」となるが、職業・性別・人種・民族・宗教などに基づく差別につながる表現をせず、中立的な表現や言葉を用いることだ。

 トランプ氏を支持しているのはそうした表向きばかりの、過度な正しさにうんざりしている人たちであり、その「うんざり感」は実は今の米国に充満しているのだろう。トランプ氏の存在は、そうした過剰なポリティカル・コレクトネスを治す「解毒剤」なのだ。

**********

インテリ相手になら格調の高いインテリ英語を、
一般大衆に対してはくだけたやさしい英語を、
これがアピールする英語です。

そう考えれば、いつも申し上げているように、
英語を勉強するときに、自分のカウンターパートを考える
ことがいかに重要かご理解いただけると思います。

もし学者・弁護士・医師・経営者・国際ビジネスパーソンをめざすなら、
くだけた英語はもちろん、
格調の高い英語も使えるようになっておくべきです。

つまり、トランプ氏レベルの英語を使えるのはもちろん、
リンカーン大統領レベルの英語を使えるようになっていないといけません。

さらに、この記事では触れられていませんが、
欧米人に対して強い印象を与えたければ、ユーモア・センスは絶対に必要です。
気の利いたジョークが旨いタイミングでいえるようになれば、
海外で十分に活躍できます。

自分の目的に応じたレベルの英語を学ぶ。
それをふまえて、英語の勉強に励んでください。

今日の教訓:難易度のずれた英語は、相手の心に刺さらない!
コメント
 リンカーンの言葉について私見を述べます。
先ず「そして・・・させない」と訳されていますね。次に表見上の主語である「人民の・・・政治」を目的語と理解されています。二番目の理解については同意します。しかし、二番目の理解の要点であるshallへの認識が不徹底で、延いては一番目の理解も不徹底と言わざるを得ません。shallは話者(Lincoln乃至we)の主語に対する意思を示す言葉です。ですから表見上の主語が目的語のようになるのです。つまり「人民の・・・を絶滅させてなるものか」という話者の意思としての表現が不可欠です。この様な表現を前提とすると、And thatを目的格とする主語weと動詞resolveを省略するわけにはいきません。「我々は・・・なるものか、ということを決心する」としたいところです。
 拙著「"Government of the people, by the people, for the people,"とは何か?」(2013. 近代文芸社)をご覧頂ければ幸いです。
  • 小林 宏
  • 2016/06/05 12:48 PM
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