欧米ビジネス・スクールで、「修行」するのも悪くない

  • 2016.04.11 Monday
  • 10:48


内向き鈍感人間が増える中、一部には外向き敏感人間がいます。
そういう人は、海外へ出ることによる利点を極限まで利用しようとするものです。
その最たるものが、ビジネス・スクール留学です。

ところが、欧米の有名ビジネス・スクールに留学する日本人が減っています。
すばらしい勉強環境でチャンスを得られるのに、挑戦しないのです。
理解できません。

しかし、逆に言えば、日本人の競争相手が少ない分、いまは留学できるチャンスだともいえます。
実際、このご時世でも外向き敏感勉強家はビジネス・スクール留学をその後の人生に役立てています。

こうしてMBAを取得した人たちが、いま経営の最前線で活躍しています。
ビジネス・スクールが役立つか役立たないかは、行った人次第です。

そして、役立てている人は、欧米のビジネス・スクールで厳しい「修行」を重ねた人です。
そのひとりであるサントリーの新浪剛史社長の体験談は、刺激的です。
 
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私を変えたMBA
新浪氏が米企業相手でもひるまない理由
新浪剛史サントリーHD社長に聞く(上)

NIKKEI STYLE 2016/4/11

 経営手腕を買われ、外部からいきなり企業のトップに就任する米国流の「プロ経営者」が、日本でも増えている。代表が、一昨年、ローソンからサントリーホールディングスの社長に就任した新浪剛史氏(57)だ。プロ経営者の多くに共通するのは、MBA(経営学修士)ホルダーであるということ。新浪氏が経営者への道を歩み始めたきっかけも、米国へのMBA留学だった。

■海外留学がしたくて、留学制度のある三菱商事に就職。ところが、社内の選考試験に2度落ちた。

 慶応大学時代に米スタンフォード大学に1年間、交換留学した時の授業の面白さが忘れられず、もう一度、米国で勉強したいと思っていました。それで三菱商事に入ったのですが、いざ留学を目指したら、社内の選考試験に2回連続、落ちました。

 落ちたのは2回とも最終の役員面接。ということは、自分は会社にとって必要のない人間ではないのか。だったら、いつ会社を辞めることになっても自力で生きていけるよう、MBAはなおさら必要だ。それにMBAを持っていれば、組織に頼らず好きなことができるかもしれない。そんなことを考えたら、MBA留学への意欲は、社内試験の不合格で萎えるどころか、さらに高まりました。

 会社を辞めて行くことも考え、密かに受験準備を進めてハーバード大学ビジネススクールに出願したら、合格してしまいました。ところが、合格通知が届くのと前後し、再々挑戦した社内試験にも合格。結局、社費留学することにしました。

■ハーバードで待っていたのは、米国人との熾烈(しれつ)な競争だった。

 ハーバードビジネススクールでは、授業中いかに積極的かつ中身のある発言をするかで成績の半分が決まります。英語のハンディのある日本人留学生にとっては、それだけで大変ですが、さらに輪を掛けて大変なのは、クラスメートとの熾烈な競争。1回の授業で、教授に指名され発言できるのは、90人中、せいぜい3分の1の30人ぐらい。ハーバードの成績は相対評価で、下位何%かは強制的に退学させられます。だから必死です。あまり指してもらえない時は、授業終了後に教授に会いに行き、「もっと僕を指してください」と直談判しました。

 発言しても内容が伴わないと低い評価になるので、予習も徹底的にやりました。毎朝6時に起きて、7時半までクラスメートと勉強会夜も10時から夜中の2時ぐらいまで再び勉強会をこなしてから寝ます。睡眠時間は平均して2、3時間金曜日には疲労がピークに達して頭の中が思考停止状態になり、授業中、教授やクラスメートの言っていることが、さっぱりわからない。ある時、体調がよくないなと思ったら、血尿が出て、焦りました。たまたま弟が医者をやっているので、弟に相談したら、「精神的なものだろう」と。それくらいきつかった。まさに修行です。今振り返っても、ハーバードの1年目はもう二度とやりたくありませんね。

■それでも1年目の後半になると、授業にも徐々に慣れ、自信もわいてきた。

 3、4カ月たって耳が慣れてくると、米国人のクラスメートが何を言っているのかほぼ完ぺきに理解できるようになりました。すると、実は彼らは、そんな大したことを言っていないということがわかってきたんです。本当に優秀な人もいますが、大半は、プレゼンの仕方がうまいので、すごいことを言っているように聞こえるだけ。米国人は小学生のころからディベートの訓練をするので、もともとプレゼンは上手です。相手も自分と同じレベルだとわかったら、やりあえる自信が急に出てきました。今でも、ビジネスで米国人や米国企業を相手にしても気後れしないのは、この時の経験から来ていると思います。

 ただ、プレゼンにたけた米国人を見て、世界で通用するにはプレゼン力が大切だということも悟りました。なにせグローバリゼーションは、アメリカナイゼーションとほぼ同義語ですから。必須科目の中にもプレゼンを学ぶ授業があり、いい勉強になりました。

 結局、1年目は、必死で頑張ったかいがあり、上位10%に入るほど良い成績を残すことができました。

■余裕の出た2年目は、課外活動にも積極的に参加。リーダーシップ力が鍛えられた。

 ビジネススクール内のアジアン・ビジネス・クラブという会の会長に立候補し、当選しました。学生の自主活動組織の一つですが、当時はバブルの絶頂期だった日本への関心が非常に高く、約350人の会員を抱える大所帯。会長として、著名なゲストスピーカーを呼んだり、日本への研修旅行を企画したりしました。

 日本への旅行では、添乗員の役目を引き受け、約100人を引き連れてトヨタの工場や通産省(現経済産業省)などを見学。カラオケにも行きました。多人数ですし、自己主張が強い人たちばかりなので、まとめるのが大変。食事一つとっても、旅行の最後の方になると、みんなマクドナルドを食べたいとか勝手に言い出し、収拾がつきません。ただ、とても貴重な経験でもありました。授業よりもずっと面白く感じたくらいです。

 特によかったのは、リーダーシップを学べたことだと思います。トップが自己犠牲の精神でメンバーのために一生懸命尽くすと、みんなトップを信頼し言うことも聞くようになる。リーダーシップとはこういうことかと実感しました。

インタビュー/構成 猪瀬 聖(ライター)

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どうでしょうか。新浪社長の発言を読んで、ワクワクなさるでしょうか?

もしワクワクなさるなら、それだけで「敏感勉強家」の証拠ですし、「経営者」になりうる素質があるというものです。

欧米の大学・大学院で勉強するのは本当に大変で、新浪社長が金曜日になると頭が動かないと述べられていますが、真剣に勉強している学生ならば、すべてが同じ発言をすることでしょう。

貧乏英語塾長の場合も、金曜日のクラスが終わると、精根尽き果てていました。楽しい週末であるにもかかわらず、何もする気が起こらず、クラスが終わるとすぐにアパートへ帰って、ベッドでひたすら眠ったものです。そのころの大変な「修行」を乗り越えたから、英語も身についたと思います。

ともあれ、世界のビジネスアリーナで優秀なプレーヤーとして戦うためには、こういう世界の俊英たちが集まるトップランクの欧米のビジネス・スクールを含めた大学院で修行することはとても有意義なことです。

新浪社長に触発されて、ひとりでも多くの若者が日本を飛び出して、ビジネス・スクール留学してくれることを、日本の未来のためにも願ってやみません。

今日の教訓:「修行」なしで経営者として成功できるほど、いまのビジネスは甘くない!
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